バイエルン州各地の広場に立っているマイバウム(Maibaum=5月の木)は、それぞれの町のシンボルです。バイエルン・カラーの青と白にペイントされ、その町を象徴するお店や職業などが絵で示されています。これは3~5年ごとに新調され、その際にはお祭りが開催されます。今回は私の住む小さな町ヴェルトで昨年行われたマイバウム祭りの様子をリポートします。
ヴェルトでは、5月1日がマイバウムのお祭りの日と決まっていますが、その数週間前から週末ごとに子ども向けのフリーマーケットやバイエルン風の朝食(ブレッツェルと白ソーセージ、ビール)、ワインの夕べなどのイベントが行われます。そして、この期間に何と言っても欠かせないのが、マイバウムの「見張り役」。これは、マイバウムの風習と関係があります。
キレイにペイントされ、完成間近のマイバウム
マイバウムになる生木は、お祭りのほぼ2週間前に町の外れにあるテントへ運び込まれ、丁寧に色付けされて飾りが施されます。ところがその作業期間中は近隣の町がこの木を「盗む」ことが許されているのです。そして盗まれてしまった場合、町はこれを買い戻さなければいけません。その昔は実際に盗まれたこともあったようですが、なにせ20メートルを超える大木を盗むには危険も伴います。そのためルールが改定され、今では木に手を触れることで「盗み」が成立するようになりました。
とは言え、万が一、木が本当に持ち出されてしまったら大変なので、太い鉄鎖で木を固定する念の入れようです。さらに、ここで活躍するのが見張り役。町内会がボランティアを集め、24時間体制で木を見張れるようにシフトを組みます。私も昨年は2回、午前中のシフトに入りました。夜のシフトでは、何度か隣町からの襲撃があって見張り役が撃退していたそうですが、一度だけ隣町の住民に盗まれて(木に触れられて)しまいました! 数ケースのビールを贈って買い戻したそうですが、なかなかアクティブな隣町ですね。次の機会には、ぜひ盗み返して欲しいものです。
さて、祭り当日は鼓笛隊のパレードに合わせて、広場に木が運び込まれます。長い木製の棒を使って人の手で立てるのが伝統ですが、私の町では大きなクレーン車がマイバウムを吊り上げ、基礎に据えた後、数人が太いボルトで固定しました。その後、クレーンが人を上方へ吊り上げ、最後の仕上げの旗を飾って完了。これは見ている方が、ちょっとハラハラしてしまいました。
土台への据え付け作業。慎重に……
町によって祭りの方法は異なるようですが、あなたの町にもマイバウムの木があったら、ぜひ見張り役を担当してみてください。
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。